後からとひつきりなしに国境へ送られた兵隊達は二度と再び帰つては来ませんでした。何処で暮らすのも一生と考へ、かへつてせいせいしていゝと思つた兵隊も中にはゐたのでせうが、住みなれた街から再び帰らぬ旅に出るのですから、別れにくい心残りもあつたことはあつたのでせう。
 時間が経つてその王様も死に、その次の王様も死にました。そして、その次の王様も死んでしまつたことはあたりまへのことです。百年も千年もの間には次々の何人もの王様が死んだし、王様でない人達だつて死んだり生れたりしたのです。初めの頃はほんの二三人の大臣が王様のそばにゐたのでしたが、だんだんにその数が多くなつて「時計大臣」「紙屑大臣」などといふものまであるやうになつてしまつたので、数百人といふ大臣が王様の仕事の補佐をするやうになつたのです。
 時計大臣といふのは、自分の時計とちがつた時計を持つてゐる者から見つけ次第に罰金を取つたり時計をたくさん持つてゐるものに勲章を呉れたり、届けをしないで時計を止めてゐるものを罰したり、街の時計を正確に直して歩いたりするのが役目なのです。時には、金の時計は胸ポケツト銀のは胴ポケツト銅のはずぼんポケツト、そ
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