がもう庭にはなく、自分と一緒に縁側からあがつて部屋の中まで来てゐるのに気がつくと、私は妙にいそがしい気持になつて着物をぬいでふんどし一本の裸になつた。
(何といふことだ)裸になると、うつかり私はも一度雨の中へ出てみるつもりになつてゐた。何がこれなればなのか、私は何か研究するつもりであつたらしい。だが、「裸なら着物はぬれない――」といふ結論は、誰かによつて試め[#「め」に「ママ」の注記]されてゐることだらうと思ふと、私は恥かしくなつた。
私はあまり口数をきかずに二日も三日も降りつゞく雨を見て考へこんだ。そして、雨は水なのだといふこと、雨が降れば家が傘になつてゐるやうなものだといふことに考へついた。
しかし、あまりきまりきつたことなので、私はそれで十分な満足はしなかつた。
家
夕暮になつてさしかけたうす陽が消え、次第に暗くなつて、何時ものやうに西風が出ると露路[#「路」に「ママ」の注記]に電燈がついてゐた。そして、夜になつた。私は雨戸を閉めるときから雨戸の内側にゐたのだ。外側から閉めて、何処かへ帰つて行つたのではないのだ。
毎月の家賃を払ふといふので、貸してもらつてゐる家を
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