窓を開けると子供の泣声が聞えてくる
人通りのない露路[#「路」に「ママ」の注記]に電柱が立つてゐる
恋愛後記
窓を開ければ何があるのであらう
くもりガラスに夕やけが映つてゐる
いつまでも寝ずにゐると朝になる
眠らずにゐても朝になつたのがうれしい
消えてしまつた電燈は傘ばかりになつて天井からさがつてゐる
初夏無題
夕方の庭へ鞠がころげた
見てゐると
ひつそり 女に化けた躑躅がしやがんでゐる
曇る
空一面に曇つてゐる
蝉が啼きゝれてゐる
いつもより近くに隣りの話声がする
夜の部屋
静かに炭をついでゐて淋しくなつた
夜が更けてゐた
眼が見えない
ま夜中よ
このま暗な部屋に眼をさましてゐて
蒲団の中で動かしてゐる足が私の何なのかがわからない
昼の街は大きすぎる
私は歩いてゐる自分の足の小さすぎるのに気がついた
電車位の大きさがなければ醜いのであつた
十一月の電話
十一月が鳥のやうな眼をしてゐる
十二月
炭をくべてゐるせと火鉢が蜜柑の匂ひがする
曇つて日が暮れて
庭に風がでてゐる
十二月
紅を染めた夕やけ
風と
雀
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