べ、なるべく米を浮かす工夫をしませう
 それは主婦の責任であります
一、したがって、畠仕事に精だし間作を怠らぬやうにしませう
一、毎月米五合、雑巾一枚づつ集めて貯金組合を作りませう
  どちらか一方へは必ず加入すること
  雑巾は縦一尺、横八寸、糸は二重糸にて刺すこと
[#ここで字下げ終わり]
 おときは無感動な顔でそれを読んでゐた。
 是は春の婦人会の時提案があったもので、松下のおまきや吉本屋の嫁が主唱者だった。
 米は精米所へ、雑巾は朝日館へ売却の契約が出来て実行しはじめたものだった。
「おときさん、今月の分はもうおだしつらなむ?」
「お米の方だけなむ!雑巾縫はずもこちとらにゃァ手間も布もありませんで……。ためになることは解っとるけど仲々そこがやかましくて……」
 志津はだまってうなづいた。此の村には製糸工場がないので村内の者は、大抵他村の生産組合へ加盟して供繭してゐるのだった。おときの家でも朝日館の組合員だった。
 志津は今度の繭を此処で村廻りの繭買人に壱円八十銭位の馬鹿値で叩き買ひにされるより生産へ持って行きたかった。生産では春蚕を二円の仮渡しをしたといふ事だから、庄作の運送に
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