《ふ》やすことにした。
 一号を盆迄に上簇の予定である。桑の有る家では二号も始めるつもりだった。さうなると盆には忙しい真最中だ。人間の体の壊れる事などは構ってゐられぬ場合だった。
 夕方から留吉の家へ無尽の集りに人々が寄ったが又今度も立たぬ事に話し合ひがついて散った。もう後二回で満会になる掛金五十円の小口の講なのだがどうしても立たず秋迄延ばす事になった。これでこの部落の無尽は全部秋まで延期となって了った。
 二三人の居残りの者がその儘囲炉裡端に集った。いやに冷え冷えする晩だった。
「まづ毎日肴買はんか何にを買はんかって色々な奴が来やがるよ! 昨日来た菓子屋なんか四里から背負って来るんだでなあ!」
「うん、どこも不景気だでぢっとしてをれんのだな。負けとく負けとくっていふで、負けてお呉れでもいいが、ここぢゃァ何んにも買はんきめがあるでって、荷を下さん先におことわりだ!」
「いよいよなんにも買へん時節が来ちまったな。そいだがたまにゃァ鰯の一本も食ひたくなるしなあ……」
 炉端の四隅を陣取って胡座をかき乍ら話が始まってゐる。酒が出てから話が弾んで行った。勝太はふと気がついたやうに、
「小父《お
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