作れ白木耳作れって宣伝やっとるが……。なんだって儲け仕事のやれる者はやらでも済んで行ける人達だでな!」
「さうだ。今度の低利資金だって、払へる見込の有る者でなけにゃ貸せんちふものな。……払へる見込がつかんでみんな困っとるんぢゃないか!」
「ん、岡田村だけで一万八千円の低資申込だっていふが、そんなものは焼石に水なんだで…」
 唯男は長歎するやうに云った。
「村会が揉めるったって、無理はない。貧乏な村だでなあ。……みんなどん[#「どん」に丸傍点]栗の背っくらべだ。それで要る方はおんなじに要るんだで、小さい者に大きな負担をうんと背負ひ込ますんだ!」
「これで岡田村もよその村へ出ると地所だけでも大きいちふでな!」
「ん、だけどそんなものは問題にならんさ!。よその村だってどうせ貧乏人は貧乏なんだで……。俺らはもっと徹底したことをいふぞ!」昇三はきっぱりした口調で云った。「とにかくここらの者にもどうにも出来ないどんづまりが来つつあるんだ。ここからどう浮び上って行くかといふことが根本の問題だと思ふな!」
 話題はきまって社会思想の方にふれて行くのが常だった。
「この村ぐらゐ思想的に遅れとるとこは有り
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