利国さあたりもさうだが!」
「うん、そいだがあの家もこの景気で四人から五人食はせて行かんならんのだで、後家の腕ぢゃえらいことはえらいなあ!」
同じやうな話がいつまでもくどくどと続けられて夜が更けて行った。
三
気がついて見るとこの部落にはやもめ暮しの者が多かった。去年の秋夫に死なれた森田の志津、春死なれた窪のおふじ、志津の南隣りの源吉も子供の秀ともう久しく独り暮しである。源吉の女房はお咲と云って、もと吉野屋に、茶屋女をしてゐる時一緒になったので眉の細い一寸美い女だった。源吉に稼がしてのらくらしてゐる事が多かった。
それが旅渡りの仕立屋の職人といい仲になって真昼間ふざけ散らしてゐた。源吉が漸っと気付いて一悶着起きた。源吉が目の色|変《か》へて男の宿の平吉の家へ飛び込んだ時はさすがに二人共震へ上った。
「源公も意久地が無いぢゃないか。二人居るとこへ飛び込んでよ、金毘羅の野郎怖じけりゃがって、五尺下って話せって頼んだら源公は五尺ちゃんと引き下ったちふぞ……思ひ切り打ちのめして遣りゃあよかったものを!」
平吉から聞いた新蔵はさう云って憤慨した。
讃岐の生れだと云ふ
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