るといふ遣り方である。それで駄賃が一俵十五銭と云ふところ。
繭相場次第で秋にはどこ迄落ちるか見当がつかぬと聞いては最早手段がなくなって了ふ。
「佐賀屋の小父さま居る?」
「居る!」勝太は自分で答へたが戸間口の方を透かし乍ら、
「義公か、なんだ?」と云ったが「お前まあ一寸借りてあがれよ!」と坐ったままである。
「義一っさ、おあがりな!」暗い井戸端で洗濯してゐた、留吉の女房が入りしなに挨拶した。
「義一っさは酒を飲まんでお茶でも入れるに!」
「お前、酒は駄目か? お父まの子ぢゃねえな」
「今とてもいい相談がはじまっとるとこよ……」
アハハハハ……と笑声が湧いた。
「直樹さ帰って来たっちふなむ、なんに来たんずら?」義一は新蔵の横へ坐り乍ら聞いた。
「うん、もう十日ばか来とる。あいつも何をしとるんだか……名古屋の方だってどうせいいこたあねえらよ。今時ぶらぶらしとるやうぢァ!」
「俺らも此処に居ったってつまらんでどっかへ行かっと思っとる!」
義一はさう云ひ出した。
「俺ァどうせ学問の方は駄目だで……、老爺と二人で食へさへすりゃいいんだで!」
「お前食ってそこが出て行けさへすりゃ結構よ!」
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