になるのをいやがるおかみさんは、そのやぶを見つけると、夜のうちに、こっそりと、そこへすてにいけといいつけたのです。
 要吉は、うんざりしてしまいました。それで、ある時、要吉は思いきって、おかみさんにいってみました。
「こんなにならないうちに、なんとかして売ってしまうわけにはいかないもんでしょうか。安くでもして……。」
 そうすると、おかみさんは、要吉をにらみつけていいました。
「生意気《なまいき》おいいでないよ。なんにもわかりもしないくせに。そうそう安売りした日にゃあ商売になりゃあしないよ。」
「でも……」要吉は、もじもじしながらいいました。
「すてっちまうくらいなら、ただでやった方がまだましですね。」
 要吉は、それをいったおかげで、晩《ばん》の食事《しょくじ》には、なんにももらうことができませんでした。要吉は、お湯《ゆ》にもいかずに、空《す》き腹《ばら》をかかえて、こちこちのふとんの中にもぐりこまねばなりませんでした。
 要吉は、その晩《ばん》、ひさしぶりにいなかの家のことを夢《ゆめ》に見ました。ある山国にいる要吉の家のまわりには、少しばかりの水蜜桃《すいみつとう》の畑《はたけ》が
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