毎日こうもたくさんくさっていくのはどうしたことだろう。それでいて、毎日おかみさんが売り上げの中から、まとまったお金を銀行《ぎんこう》へあずけにいくところをみると、お店は損《そん》をしているはずはない。それではこれだけのくさったくだものの代《だい》[#ルビの「だい」は底本では「たい」]はだれが払《はら》ってくれるのだろうか。
 それから先《さき》は要吉にはどう考えてもわかりませんでした。
 一山いくらのお皿《さら》の上には、まっ黒《くろ》くなったバナナだの、青かびのはえかけたみかんだの、黒あざのできたりんごだのがのっていました。
「こんなにならないうちに、なぜもっと安くして売ってしまわないんだろうなあ……安くさえすれば、もっとどしどし買《か》い手《て》があるだろうに……。」
 要吉の考えとしては、それがせいいっぱいでした。
 夜になると、要吉《ようきち》には、もっともっといやな仕事《しごと》がありました。
 要吉は、毎晩《まいばん》、売れ残ってくさったくだものを、大きなかごにいれて、鉄道線路《てつどうせんろ》のむこうにあるやぶの中へすてにいかなければなりませんでした。ごみ箱がすぐいっぱい
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