、きずが大きすぎるからと思って、はねのけると、要吉《ようきち》は、すぐ主人《しゅじん》にしかられました。それではこのくらいならいいだろう、ひとつおまけにいれといてやれと、お皿《さら》にのせると、
「そりゃあ、あんまりひどいよ。よせよせ。」
と頭ごなしにどなりつけられます。
「おまけなんです。」
 要吉がいいますと、主人は、
「ばか、よけいなことをするない、数《かず》はちゃんときまってるんだぞ。」と、けわしい目をしてにらみつけます。
 要吉は、まったく、どうしていいのかわからなくなってしまいました。ですから仕事がちっともはかどりません。そうすると主人は、「いなかっぺ[#「いなかっぺ」に傍点]はぐずでしょうがねえなあ。」ときめつけます。
 要吉は、そういわれると、ただ、もじもじと赤くなるばかりでした。

     二

 でも、このごろはだいぶ仕事《しごと》のこつ[#「こつ」に傍点]がわかってきました。要吉は、せっせと手を動かしながら、いろんなことを考えるようになりました。
 せっかく、方々《ほうぼう》の国から送られてくるこれらのおいしい熟《じゅく》したくだものが、店にかざられたまま、毎日
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