要吉にとってはなによりもいやな、よりわけ[#「よりわけ」に傍点]をしなければならなかったからです。店の品物《しなもの》の中から、いたみかけたのや、くさりがひどくって、とても売りものにならないようなものを、よりわけて、それぞれ箱とかごとへべつべつにいれるのです。
枝《えだ》からもぎとられると、はるばると、汽車《きしゃ》や汽船《きせん》でゆられてきたくだものは、毎日毎日《まいにちまいにち》、つぎからつぎへといたみくさっていくのでした。要吉は、なめらかなりんごのはだに、あざのようにできた、ぶよぶよのきずにひょいとさわったり、美しい金色のネイブルに青かびがべっとりとついたりしたのを見るたび、まるで自分《じぶん》のはだが、くさっていくようないたみを感ぜずにはいられませんでした。
よりわけ[#「よりわけ」に傍点]がすむと、今度《こんど》は、一山《ひとやま》売りのもりわけです。いたみはじめたくだものの箱の中から、一山十|銭《せん》だの二十銭だのというぐあいに、西洋皿《せいようざら》へもりわけるのです。そのあんばいが、それはむずかしいのでした。
「そのくらいなのは、まだだいじょうぶだよ。」
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