話ですね。そんなにならないうちに、だれかめし上がる方《かた》はないんですか。」
「ああ、お許《ゆる》しがでないとあたしたちもいただけやしないからね。それに、」と、女中は妙《みょう》な顔をして笑いながらいいました。「そんなに心配《しんぱい》しなくったっていいわよ。こっちでかってにくさらしたんだから、またいくらでもとってあげるわよ。お金さえ払《はら》やぁ、おまえさんの商売に損《そん》はないじゃあないの。」
「それはそうですけれど……」
要吉は、なんとなくむかむかするといっしょに悲《かな》しい気持になりました。店でくさらせるばかりでなく、こうして、おやしきの台所《だいどころ》へきても、まだ、たべる人もなくくさらせる。大ぜいの人びとの手をかけて、やっとのことでここまで運《はこ》ばれてきたとおとい品物《しなもの》がだれにもたべてもらえずにくさっていく。ただ、ごみ箱へすてられるためにばかり運ばれてくるとして、それでいいものだろうか。しかし、一方《いっぽう》には、くさりかけた一山いくらのものでさえも、十分《じゅうぶん》にはたべられない人びとが大ぜいいるのに。
「ああ、今夜《こんや》もまた、あのやぶ
前へ
次へ
全14ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
木内 高音 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング