へ、くさりものをすてにいかなければならないのか。」
 そう思うと、要吉《ようきち》はなんともいえないいやな気持になりました。商売《しょうばい》というものが、どうしても、こういうことを見越《みこ》してしなければならないものだったら、なんといういやなことだろう。
 しかし、要吉は、水菓子屋の店をとびだすわけにはいきませんでした。要吉が徴兵検査《ちょうへいけんさ》まで勤《つと》めあげるという約束《やくそく》で、要吉の父は、水菓子屋の主人から何百円かのお金をかりたのです。
 いくら考えても、要吉には、商売のためにはたべられるものを、くさらせていいというりくつ[#「りくつ」に傍点]はわかりませんでした。
「大きくなったらわかるだろう。」要吉はそういって自分をなぐさめるよりほかはありませんでした。
「それに年期《ねんき》があけたら、自分でひとつ店をだすんだ。そうすればけっして、品物をむざむざとくさらせるようなことはしやしない。くさりそうだったら、ただでも人にたべてもらう。」
 要吉はそうも考えてみました。しかし、それは、要吉が大きくなってみなければ、できることだかどうだかわかりません。
「……その
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