殆ど無意味なる勝《まさ》りて新意味あるを認めずばあらざる也《なり》。然《しか》らば
第二解[#「第二解」に傍点]に従はば如何。国民性の一部の影を描けといふの空語たるは論なけれど、其の全部の影を描けと言ふの意となさば、おのづから一種の根拠あるに似たり。主観的なる今の作家に向つて国民性全躰[#「国民性全躰」に傍点]の影を描破せよと言ふ、吾人は必しもこの要求を非とせず、唯々《たゞ》[#「々」は、踊り字の「二の字点」]今の作物に国民性全躰の影の現れざるを見て作家自身にのみ其の罪を嫁すべきか、或は(特別なる時勢の結果として)国民性全分の影其のものの頗る模糊《もこ》として捉《と》らへがたきものあるにも因せざるか、(後に論じたるが如く)若《も》し後者に一面の理ありとせば、漫《みだり》に此の境域を明らめずして国民性全分の影を描けと要求するの果して当を得たりといふを得べきか。然らば、更に
第三解[#「第三解」に傍点]に従ふとせんか。疑ふらくは国民性を唱ふる一派の正意は此の点にはあらざるか。其の意に以為《おも》へらく、国民性|即《すなは》ち国民の美質を描かざる小説は国民的性情を満足せしめざる小説なり、
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