ある。前者は五官により物の表面を見る立場を云ひ、後者は裏面に徹し精密に吟味する立場を云ふのであるが、物的現象と雖も微視的に考察することになると、甚だ困難を感ぜしめ、終には分らないところに達するのである。さうした例を擧げて見ると、餘りに有名な話であるが、ニュートンは物體が地上に落ちる現象を掘下げて、物質間に互に相引合ふ力があることを證明し、之を引力と名づけた。同時に其引力により二ツの質點が操られて動くときは、各※[#二の字点、1−2−22]他點を焦點とする圓錐曲線を描くことが又證明された。ところが更に一質點を加へて見ると、三ツの質點が如何なる運動を爲すかと云ふことは、流石のニュートンも齒が立たない難問題と化したのである。偖この引力の正體は今以て判然せず、學者の研究により彌※[#二の字点、1−2−22]複雜化するに至り、又この難問題も依然として未解決の儘殘されてゐる。又一例を取ると、あらゆる物體は分子より、分子は原子より構成され、其間の作用は因果的に規定されることは、昔から知られてゐるのであるが、最近學者の研究によれば、分子原子の奧深いところを覗見ると、其所には萬能と考へられた因果律も應用
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