現象も心的現象も即ちあらゆる現象は皆事實なりと取るのであるが、知るべき限りの宇宙はあらゆる現象の總和に外ならぬ筈であるから、即ち又事實の總和である。則ち茲に宇宙は全一最大の事實と見做されることになる。而してあらゆる事實は其構素として從屬關係を取り、各※[#二の字点、1−2−22]の事實は又從屬關係或は同位關係により連絡制約せられた複雜無限の連鎖に發展する。之を事實網と名づけるであらう。事實網は現象の連絡制約を意味するもので、即ち事實の相對性を規定することを思はなければならない。世間に絶對と稱せられるものが少くないが、もしそれが事實網の何所かに見出されるなら、絶對と見るは錯覺であると想ふべきである。事實網は其儘現象網であり、又知識網に變形し得べきことは言ふまでもない。
三
事實網は其儘宇宙の實體を成すものであるから、至るところ空虚たるを許さない。其所に必ず内容がある。其内容の機構が明瞭に觀察出來る場合もあり、模糊として捕捉し難い場合もある。一般に物的現象は前者に屬し、心的現象は後者に屬するやうに想はれてゐるが、必しも左樣ではない。凡そ物の見方に巨視的と微視的と云ふことが
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