赤裸々無遠慮の眞實(Truth, bare naked unblushing truth.)を表すべきを説き、ランケは現實に在つたまま(wie es eigentlich gewesen)に書くべきを論じた。勿論その通で、眞を書現はすは歴史の使命であるが、書現はす前に觀察することが必要である。扨この觀察は直接の場合に於ても錯覺或は誤斷に陷り、背理を認識し得ないことがある。間接に記憶を辿るとか、報告を頼るやうな場合には眞を離れる危險が加はる。更に最も警戒すべきは欺瞞に引懸ることである。現在此の如き擾亂的原因を考慮せざるを得ないのであるから、過去の歴史に對しては猶更批判の目を離してはならぬ、理想を云へば、一々の事實に客觀的妥當性を要する。即ち證據の附いた事實を確立することが望まれる。この證據附の事實を發見することが第一の困難であり、更に其事實を確保することが第二の困難である。
第一の困難は事實の認識に關するもので、今日は科學の副産物たる寫眞、電信、映畫、ラヂオ、蓄音裝置等を利用して、認識の精確を期することも出來るであらうし、欺瞞に對する何等かの方法も早晩案出されようと想はれるから、現今の
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