した宇宙學に進化する。これが即ち理想の歴史であり、事實網を歴史と取つた當然の歸結である。
今到達した歴史の概念は合理的とは云へ、所謂哲學的飛躍を爲したもので、實現不可能と想ふべきものである。實際の歴史は一時にかゝる大望を遂げ得べきでない。しかしながら事實網の至る處に於て實際に歴史の成立を見るは明なことで、就中第一の問題とすべきは人類である。人類の歴史は古今東西に亙り現出した思想・行爲の知識の體系として成立する。普通歴史と稱するは即ちこの歴史を指すものであることは、異論を唱へるものが無いであらう。惟ふに人類は微々たる一小天體に押込められ、僅に五六の知覺を有する生物に過ぎぬものなれば、その經驗、知識の程度も思遣られ、決して誇るべきものにあらざることは、宜く反省考慮すべきである。然るに冷靜の目を以て見れば、人類は勝手に理論や信仰を考へ、同胞を救ふと稱するなどは先づ善い部で、自ら萬物の靈長を以て任じながら、いざとなると豈圖らんやの行動に出づる複雜怪奇のものもある。しかしながら、これも亦事實網の現象であり、且つ其原因は内省に由り判明し得ることなれば、將來改善の道もあるべく、深く執つて責める必要
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