して考驗甚だ顯著なるものがある。しかしながら理想を現實と取る錯覺に罹り、自繩自縛に陷る傾向がある。第三に科學は前二者の如く、一手に宇宙の問題を引受けることを爲さず、豫め事實網につき類似の現象を選み、一區劃に纏めて徹底的に考察を掘下げ、機構の類似を見ることにより方則の樹立に到達するのである。この見方は暫も現象を離れず、萬一解すべからざるものあるも、前二者に於ける如く、自分に都合よく包攝若くは否定することなく、飽くまで現象を正しきものと取り、新なる解釋を探求するのである。この態度を洞察すれば、科學は如實に事實を認めんとするもので、之に主觀的の意味を薫染するものでない。故に科學は微視的記述であり、何時でも歴史に變形する可能性ありとすべきである。第四は即ち我歴史であるが、歴史は事實網を歴史と見て、如實に之を認識することで、何處までも事實を離れない點は科學的と稱すべきであらう。歴史は前三者の如く解釋を主として起つたものでない。しかしながら妥當な解釋は必要に應じて採用すべきであり、更に又一歩を進めて有らゆる解釋を包含せしめる見方も歴史の根本的概念に牴觸するものではない。茲に於て歴史は一切知識を綜合
前へ 次へ
全21ページ中14ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
狩野 亨吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング