と応じて、スキーが雪をする音が聞えてくる。休んで木を見あげると、木鼠がガサガサと木を登って遊んでいた。二ノ俣のドーへきて、顔を洗っているうちに案内がやってきた。横尾の屏風岩を見るころ雨が降ってきた。雪がザラメのためにスキーに少しも付着しない。だんだん広い原に出てきた。今は広い雪の原の上を、遥か彼方に目標をえらんで、一歩に一間ぐらいずつ滑走して行く。右手には凄いように綺麗な穂高を眺め、行手に霞沢、六百、徳本の山々が、上の方は雪と見えて白く霞んでいる。柳はもう赤い芽を吹いていた。宮川の池のかなり手前の木陰で昼食をつかった。雨などは眼中に無くなって、焚火にあたりながらゆっくり飯を食った。宮川の池を訪問して牛番小屋のところへ出ると、スキーの跡があった。かねて知合いのウインクレル氏だとすぐ思って、会えるかも知れないと道を急いだ。雪は非常な滅じ方で、ここだけならスキーは無用の長物だと思った。スキーをする雪ではない。※[#「木+累」、第3水準1−86−7]の雪だ。温泉は雨の中に固く戸を閉ざしていた。傍の小屋では犬が吠える。入って見ると常さんがいた。「これは珍しい人がきた」と心よく迎えてくれた。ウ氏は
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