今朝平湯へ行ったそうだ。乗鞍へ行ったのだ。時刻はまだ午後四時前だ。炉を囲んで盛んに話がはずんだ。犬がおびえている。
三月二十五日。今日はここで遊ぶことにした。湯の元へ行って岩の中の温泉に浴すると、ぬるくて出ることができない。晴れ渡った朝の空気を吸いながら、河の流れを聞きながら、岩の浴槽で一時間もつかっていた。十時頃から焼岳へ散歩に行った。焼の方から見た霞沢や六百山はなかなか綺麗だ。殊に木の間から見た大正池と雪の霞沢の谷は美しい。昼めしにビスケットを噛っていると雨になった。焼のラバーの跡には、雪が層をなして見える。小屋に帰って常さんと小十の猟の話を聞いていると、ちっともあきない。夜に入って雨は吹雪に変った。戸を打つ吹雪の音がサラサラと聞える。炉には大きな木がもえさかって、話はそれからそれへと絶えようともしなかった。
三月二十六日。吹雪は大分強い。十分用意をして午前七時半に出発した。いい雪だ。本当に粒の細かい水気のない雪だ。理想的のブルツファシュネーだと感じながら、吹雪の中を徳本に向かった。すっかり用意をして吹雪の中を歩くのは、気持ちのいいものでかつ痛快なものだ。徳本の下で焚火をした。
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