るくらい一面の雪の原である。これからはスキーは雪の小山を上ったり下ったり、ほとんど黙っていても滑って行く。夏のことを思うとその道といい骨折りといい、馬鹿気たものだと思う。案内は上の方に見える棧道をさして笑った。二ノ俣のドーの小屋の中には、池のように水が溜っていた。さすがにここは谷川が流れている。いよいよ赤沢も近い。川の両岸には雪の大だんご、小だんごが一面に並んでいる。ちょっとスキーは困難を感じた。やがて、赤沢の岩小屋が右手に見えた。もちろんスキーは谷の上を歩いている。夏きてはこれが雪で埋まろうとは想像もつかない。驚くほど平坦な坂である。谷の両側はだんだん高くなって、ボーゲンを画いたらさぞいいだろうと思うスロープが谷を埋めている。しかしいまの雪では固すぎる。日はようやく暮れて、たちまち雪は氷のようにかたくなった。六時に全く雪に埋ったアルプス旅館を掘ってはい込んだ。幸いに雪は入っていない。蝋燭をともして焚火をした。これだけ雪に埋っていれば、中で焚火をしても、大丈夫だと安心した。煙の出口がないのでボロボロ涙をながしながら、雪をとかして湯をつくった。米もあった。ふとんもあった。今晩は天国へ行っ
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