し之を返せり、其一に曰く曾謝横[#レ]経弄[#レ]翰儒、寧能余技備[#二]観娯[#一]、胸中書本猶堪[#レ]献、彷彿※[#「幽」の「幺」に代えて「豬のへん」、第4水準2−89−4]鳳七月国、顴高く眉|蹙《ちゞ》まれる老人は其眼を光らせて筆を揮《ふる》へり。彼時に五十一、英気堂々|猶《なほ》屈する所なき也。而して健康は彼の雄心に伴はず、病は突然彼をして永く黙せしめたり。
 東山六六峰何処、雲鎖[#二]泉台[#一]惨不[#レ]開、歳在[#二]竜蛇[#一]争脱[#レ]※[#「戸の旧字+乙」、283−下−27]、人伝麹蘖遂為[#レ]災、一朝離[#レ]掌双珠泣、五夜看[#レ]巣寡鵠哀、彼此撫来最惆悵、海西有[#レ]母望[#二]児来[#一]。是れ梁川星巌が東海道に於て襄の訃音《ふいん》を聞きて寄せし所なり。其言何ぞ悲しきや。襄は天保三年九月二十三日を以て其の愛妻及び十歳の又二郎と七歳の三木三郎とを残して逝《ゆ》けり。是より前一年長子元協年既に二十、江戸に祗役《しえき》する為めに広島より至り、襄と京師に相遇ひ、江戸に至らば新に室を築いて父を迎ふべしと約せり。襄喜んで再び江戸に下り大に其伎倆を試みんこ
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