協を携へて東遊す。茶山之を襄に報ず。襄驚喜淀川を下りて彼等を大阪に迎へ、京都に一屋を借りて歓待旬余弟子をして周旋せしむ。相見ざること数年互に久濶を序す。思ふに春水既に老す、老ひては即ち子を思はざるを得ず。彼たとひ一たびは襄が家学を継承せずして仕籍を脱したることを悲めりと雖も襄の名天下に高きに及んでは即ち亦其老心を慰むる所なきにあらざるべし。吾人は濃情なる父と子が幼孫を傍らに侍せしめて往事を語り悲喜|交※[#二の字点、1−2−22]《こも/″\》至れるの状を想見して彼等の為に祝せずんばあらず。翌年襄始めて帰省し孤枕曾労千里夢、一燈初話五年心の詩あり、爾来《じらい》殆んど年毎に往返す。
文化十二年襄父の病を聞きて再び帰省す。父は死せずして元鼎死す、即ち元協を以て承祖の嗣となす。父の病少しく愈《い》ゆるを以て京に還る、襄が賢妻小石氏を娶《めと》りしは蓋し此前後に在り。此年除夜の詩に曰く為[#レ]客京城五餞[#レ]年、雪声燈影両依然、爺嬢白髪応[#レ]添[#レ]白、説[#二]看吾儂[#一]共不[#レ]眠と。嗚呼爺嬢豈唯白髪を添へしのみならんや。翌年二月襄生徒を集めて荘子を講じつゝありしとき、
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