成すに足るのみ。見よ清教徒は失意の時に清くして、得意の時に濁れるに非ずや。不忠、不孝、売国、乱俗、如何なる汚名も甘受せん。吾人自ら不忠ならず、不孝ならず、国を売らず、俗を乱らざるを信ず。明かに之を信ず。波をして荒れしめよ、風をして怒らしめよ、三千八百万の同胞をして三千八百万の戟《ほこ》を樹《た》てゝ吾人に向はしめよ。吾人は厳乎として我立場に立つべきのみ。
パウロ、ステパノ、ルーテル、ノックス、吾人の典型は明かに青史に在り。起《た》て吾党の士、吾人の期する所古人に在り。怯懦《けふだ》逡巡《しゆんじゆん》して、雲の如く群がれる在天の偉人に笑はるゝこと勿れ。
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千百の寇は来るとも吾のかじ
のかば岩ほも共に飛ばなん
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と云へる如き大盤石の根底を有せざるべからず。是れ即ち信条也。必しも文学あるを要せず、唯此信認あるを要す。
戦国の武士が意気を重んぜるは彼等の信条也。彼等は意気の為めには万戸侯をも辞せし也。意気の為めには死をも厭《いと》はざりし也。魏徴《ぎちよう》が所謂「人生感意気、功名誰復論」なるものは是れ彼等の血を以て保護せし信条なりし
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