止[#レ]水以[#レ]火止[#レ]火ものなり、思ふに日本の今日は器械既に足れり、材料既に備れり、唯之を運転するの人に乏しきを患《うれ》ふる耳《のみ》。
余は信ず、今日に於て我文明をして、有効のものであらしめ、活気あるものであらしめ、永続するものであらしめんとせば、現時の行掛りなる物質的開化の建造と共に更に高尚なる精神的開化の建造に我歩武を向けざるべからずと、更に之を換言すれば、器械|備付《そなへつけ》の業、略々《ほゞ》成れるを以て更に之を使用すべき人物養成に向はざるべからずと、蓋《けだ》し今日の急務実に此一点に存す焉、若し我国をして国会開設の当時に於て慷慨にして而も沈摯《ちんし》なるハンプデンの如きもの一人《いちにん》だにあらしめば吾人は如何に気強からずや、我商業世界に於て独立、独行、良心を事務に発揮する資本家多からしめば、吾人は如何に安心ならずや、我が宗教世界に於て、昔し欧洲に在て震天動地の偉功を奏せし宗教改革諸英雄の如き人傑あらしめば吾人は如何に頼母敷《たのもし》からずや、而《しか》して顧みて実際を見るに、政治の世界は壮士を使用する者に蹂躪《じうりん》せられんとし、宗教家は徒《い
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