たづ》らに博識を衒《てら》ふところの柔紳士となり了せんとす、我霊界も、我物界も、真俗二諦共に是れ風に吹かるゝ蘆底《ろてい》の人物を以て充されんとす、吾人は之が為に浩歎を発せざるを得ず、吾人は之が為に益々人物養成の必要を感ぜざるを得ず。果して然らば如何にして人物を造り出すべき、是れ吾人が此に至りて論決せざるべからざる問題なりとす(一)[#「(一)」は縦中横]世間或は第十九世紀の董仲舒《トウチユウジヨ》を学んで法律、制度を以て人心の改造を企つる者なきに非ず、然れども法律、制度はたとひ十分其効果を奏するも猶人を駆りて摸型に鋳造するに過ずして、其精神元気を改造するの用を為《な》し能ふ者に非ざるは歴史上の断案なり(二)[#「(二)」は縦中横]更に学校教化の作用を借りて人心改造の途《みち》となさんとする者あり、是前法に比すれば固より賢《か》しこき方法なるべしと雖、斯《かゝ》る注入的の教育を以て人物を作らんとす、吾人其|太《はなは》だ難きを知る、昔し藤森弘庵、藤田東湖に語りて曰く、水藩に於て学校の制を立てしこと尋常一様の士を作るには足りなん、奇傑の士は此より迹を絶つべしと学校の教育必しも人物製造の好
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