、自然に其運行に任すべきか、抑《そ》も預《あらか》じめ向て進むべき標的を一定し置くべきか、若《も》し此|儘《まゝ》に盲進するも、前程に於て、渦流、暗礁、危岸、険崖なくんば可なり、柔櫓《じうろ》声中、夢を載せて、淀川を下る旅客を学ぶも差支なしと雖《いへど》も、若|夫《そ》れ我文明の中に疾《やまひ》を存し、光れる中に腐敗を蔵するを見ば、焉《いづくん》ぞ大声叱呼して柁師《かぢし》を警醒せざるを得んや。
夫れ物質的の文明は唯物質的の人を生むに足れる而已《のみ》、我三十年間の進歩は実に非常なる進歩に相違なし、欧米人をして後《しり》へに瞠若《だうじやく》たらしむる程の進歩に相違なし、然れども余を以て之を見るに、詮じ来れば是唯物質的の文明に過ぎず、是を以て其文明の生み出せる健児も、残念ながら亦唯物質的の人なる耳《のみ》、色眼鏡を懸け、「シガレット」を薫《くゆ》らし、「フロック、コート」の威儀堂々たる、敬すべきが如し、然れども是れ銅臭紛々たる人に非ずんば、黄金山を夢むるの児なり、其中に於て高潔の志を有し、慷慨の気を保つもの、即ち晨星《しんせい》も啻《たゞ》ならじ、束髪|峨々《がゝ》として緑※[#「髟
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