いを求めるような悲鳴をあげた。五、六人続いて、縁側に飛び出して来た。が、みんな一目見ると、色を変えてしまった。誰もなんともいわないで、縁側の上に釘付にされたように立っていた。
 碁を囲んでいた築麻市左衛門までが、立ち上ってきた。さすがに彼も、一目見ると、かすかではあるが顔色が変った。
「うむ! 謎をかけおったな。われわれに、覚悟をせよという謎だな」
 彼は重くるしい口調で、みんなの沈黙を破った。
 いちばんおしまいに出て来た宇多熊太郎は、いちばん動じていなかった。
「もう諸君! 今夜がお別れじゃ! 刻限は明日の夜明けだな、案ずるに」
 彼は苦笑しながら、みんなを見返った。
「五人だけは梟首《さらしくび》か。拙者は免れぬな、あははは」
 市左衛門がそういった。彼は獄門台の数を数えてみたのである。
 格之介は、さっきから、止めようとしても止らない胴震いが、身体のどこからともなく、全身に伝わってくるのである。
 獄門台の数が五つ。それを数えたときに、彼は自分の死首がその上に載っているような気がした。もうそれで、彼が殺されて、梟首されることは確かだった。十三人の中で八人まで軽輩の士である。お目
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