げてしまうと、今度は車に積み残してあった材木を下しにかかった。
 見ると、それは幅が一尺ぐらい、長さが一間ぐらいあろうと思われる板だった。厚みは一寸にも近かった。板の数は、数えると五枚あった。
「怪《おか》しいなあ。一体、何をこさえるのだろう」
 そばにいる清八が、首を傾げながら呟いた。格之介にもそれが不思議に感ぜられていた。彼も大工が何を作ろうとするのか、少しも見当がつかなかった。
 そのうちに大工は、銘々一枚の板と二本の柱とを揃えると、板の両端へ一本ずつの柱を当てがった。
「おや!」と、思っているうちに、大工は道具箱から一尺に近い鎹《かすがい》を取り出して、柱と板との継目に当てがうと、大きい金槌へ、いっぱいの力を籠めながら、カーンと鋭く打ち込んだ。
 今まで、好奇心だけで見ていた清八が、ちらりと格之介の顔を振り返った。清八の顔には、血の気がなかった。唇がびくびく動いた。それを見返した格之介が、もっとあわれな顔をしていたことはむろんである。二人は、さっきからうかうかと、獄門台が作られるのを見ていたのである。
「こりゃいかん! 諸君、あんなものを作っている。あんなものを」
 清八は、救
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