す。今までも、時々思いましたが、それがどうも……」
と、云いかけているとき、長吉の吟味に当っていた佐々《さっさ》と云う与力が、
「こら、長吉、御奉行さまの直々の御調べだぞ。改心すると、ハッキリとお請けいたせ」
と、云った。この男は、備考書をつけた男で、長吉に同情していたため、長吉のありのままの返事を、とがめたのである。
「へいへい改心いたします。ふっつりと改心いたします」
と、長吉は、平伏した。
越前は、むしろ長吉の自然児らしい返事の方が気に入っていたが、しかし形の上では、こうハッキリ答えてくれないと、罰をかるくするわけには行かなかった。
「では、長吉、この度は、上《かみ》の特別な慈悲に依って、たたき[#「たたき」に傍点]と云うことにしてつかわす。その代りに、向後をつつしめよ。重ねて、罪を犯すと、重科はまぬかれぬぞ」
と、越前はやさしく云ってきかせた。
やがて、与力に依って、判決文が、よみ上げられた。
笞刑《ちけい》などは、当時は、現代の執行猶予くらいの恩典だった。
が、隠徳の相と盗心の相とは、両立するものと見え、木鼠長吉は、改心しなかった。すぐまた盗賊稼業を始めたと
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