力を得、部将李如柏、李如梅、李寧等も孰《いず》れも自身剣を執って戦った。しかしこの戦場は水田が多く且つ狭隘である為に、騎兵の多い明軍は自由に馬足をのばす事が出来ず、又密集体形を展開するのにも苦しんだ。日本軍は三方から攻撃を続けるので明軍次第に敗色を現した。如松は始め、恵陰嶺を越え来る時にも、落馬して額を傷つけたが、この乱軍の最中にまた馬から落ちた。井上五郎兵衛望み見て忽ち馬を馳せて将《まさ》に槍を如松に付けようとした。明将李有昇馬を寄せて之を遮り、やっと他の馬に乗せて退かせる事を得たが、有昇自らは弾丸に中って戦死した。李如梅の如きは、金甲の倭《やまと》を手ずから射殺すと云うから、日本軍の一隊長と渡合って之を倒しているわけである。この様に明軍も奮戦したけれどもやがて寒雨到り行動は益々敏活を欠くのに対して、日本軍は左右の高地から十字火を浴せたのでついに支うべくもなくなった。激戦の高潮に達したのは正午頃であるが、間もなく明軍の総退却となり、日本軍は之を恵陰嶺まで追撃した。だが長追は無用と云うので立花の先鋒小野和泉馬を横《よこた》えて日本軍を制し、隆景亦休戦を命令した。京城に凱歌を挙げて帰った
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