万の大将は隆景である。秀家始め三奉行、黒田長政等も、各々順序を以って陣構えした。
先陣宗茂の部将小野和泉は、我に一将を副《そ》えて前軍と為せ、敵の斥候隊を打破ろう。斥候が逃げれば後続の大軍動揺するであろう。そこをつけ入るべしと勧めたから、宗茂は和泉に立花三左衛門を副えて前備《まえぞなえ》とした。池辺竜右衛門進出で、我日本の戦闘は小人数の打合が多い。しかし明軍の戦の懸引は部隊部隊を以てして居る。これに対抗するには散兵戦では駄目である。と云うので、中備を十時伝右衛門、後備は宗茂と定《きま》った。準備は全く整った。その宵黒田長政例の水牛の角の甲を被って宗茂の陣に来り、一方を承ろうと云った。宗茂の軍、長政の勇姿を見て奮い立ったと云う。宗茂長政二人とも、二十五歳で、正に武将の花と云ってよかった。
正月二十六日の午前二時、宗茂の軍は、十時但馬、森下備中の二士に銃卒各数十人を率いさせて斥候に出した。この時坡州の李如松も亦出登して京城へ進軍しつつあった。明軍の方でも既に斥候を放つばかりでなく、遠近の山野に伏勢を布いたりした。十時森下の一隊は伏勢を察して、此処かしこ距離を置いて鉄砲を放ち、大勢である
前へ
次へ
全29ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング