しまいました。
そのあくる日も、そのあくる日も、私達はこのお婆さんから、二銭の苞を騙して取りました。人の良《い》いお婆さんも、家《うち》へ帰って売上げ高を、勘定《かんじょう》して見ると、お金が足りないので、私達に騙されるのに、気がついたのでしょう。そっと、交番のお巡査《まわり》さんに、言いつけたと見えます。
お婆さんが、お巡査さんに言ったとは、夢にも知らない私達は、ある朝、お婆さんに出くわすと、いつもの吉公が、
「さあ、今日《きょう》も鉄砲丸を買わなきゃならないぞ。」と、言いながら、お婆さんの傍《そば》へ寄ると、
「おい、お婆さん、一銭のを貰うぜ。」と、言いながら、何時《いつ》ものように、二銭の苞を取ろうとしました。すると、丁度その時です。急に、グッグッという靴《くつ》の音がして、お巡査さんが、急いで馳《か》けつけて来たかと思うと、二銭の苞を握っている吉公の右の手首を、グッと握りしめました。
「おい、お前は、いくらの納豆を買ったのだ。」とお巡査さんが、怖《おそろ》しい声で聞きました。いくら餓鬼大将の吉公だといって、お巡査さんに逢っちゃ堪《たま》りません。蒼《あお》くなって、ブルブル
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