るんだ。
九郎助 手前たちにそんな心配をさせるものか。こう見えたって稲荷の九郎助だ。
浅太郎 その睨みが、あんまり利かなくなっているのだ。まあ、父さん、そう力みなさんなよ。
九郎助 この野郎!
喜蔵 けんかをしちゃいけねえったら!
牛松 親分、俺あお伴はできねえかね。俺あ腕っ節は強くはねえ。また喜蔵のように軍師じゃねえ。が、お前さんのためには、一命を捨ててもいいと心の内で、とっくに覚悟をきめているんだ……。
三、四人 何をいいやがるんだ。親分のために命を投げ出しているのは手前一人じゃねえぞ。ふざけたことをぬかすねえ。
(牛松しょげて頭をかきながら黙ってしまう)
忠次 お前たちのように、そうザワザワ騒いでいちゃ、何時が来たって果てしがありゃしねえ。俺一人を手放すのが不安心だというのなら、お前たちの間で入れ札をしてみたらどうだい。札数の多い者から、三人だけ連れて行こうじゃねえか。こりゃいちばん恨みっこがなくていいだろうぜ。
喜蔵 こいつあ思付きだ。
浅太郎 そいつは趣向だ。
三、四人 なるほど、名案だな。
忠次 じゃ一つ入れ札できめてもらおうかな。
四、五人 ようがす。合点だ。
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