い。こんな青二才のいうことを聞いちゃ、だめじゃねえか。籤引きだって、ばかな。もし籤が十蔵のような青二才に当ってみろ、親分のお伴どころか、親分の足手まといじゃねえか。籤引きなんて俺まっぴらだ。こんな時、いちばん物をいうのは腕っ節だ! なあ、親分! くだらねえ遠慮なんかしねえで、たった一言嘉助ついて来いっ! といっておくんなせい!
喜蔵 嘉助の野郎、大きいことをいうない。腕っ節ばかりで、世間さまは渡れねえぞ。まして、これから知らねえ土地を遍めくって、上州の国定忠次でございといって歩くには、駆引き万端の軍師がついていねえことには、動きはとれねえのだ。いくら手前が、大めし食いの大力だからといって、ドジばかりを踏んでいちゃ旅先で飯にはならねえぞ。
九郎助 (今まで黙っていたが)腕っ節だとか駆引きだとか、そんなことをいっていちゃ限りがねえ。こんなときは盃をもらった年代順だ。それが、まっとうな順番だ。盃をもらったのは、俺がいちばん古いんだ。その次が弥助だった。なあおい!(弥助の方を見る)
浅太郎 九郎助じいさん、何をいうんだい。葬礼のお伴じゃねえんだぞ。年寄ばかりがついていて、いざとなった時はどうす
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