とも。
忠次 (黙っている)……。
浅太郎 なあ! あっさりと名指しをしてくんねえか。
忠次 (黙っていたが)名指しをするくらいなら、手前たちに相談はかけねえや。みんな命を捨てて働いてくれた手前たちだ。俺の口から差別はつけたくねえのだ。
九郎助 こりゃ、もっともだ。親分のいうのがもっともだ。こんなまさかの場合に、捨てておかれちゃ誰だっていい気持はしねえからな。
浅太郎 (九郎助に)手前のような人がいるから物事が面倒になるのだ。年寄は足手まといですから、親分わしゃここでお暇をいただきますと、あっさり出ちゃどうだい。
九郎助 何だと野郎、手前こそまだ年若でお役に立ちませんから、この度の御用は外さまへねがいますといって引き下がれ。
浅太郎 何だと。
忠次 おい! 浅! 手前出すぎるぞ。黙っていろ!
浅太郎 はい。はい。
(釈迦の十蔵、ふとひざをすすめて)
十蔵 なあ、親分いいことがあらあ。
二、三人 何だ。何だ。いってみろ。
十蔵 籤《くじ》引きがいいや。みんなで、籤を引いて当ったものが親分のお伴をするんだ。
忠次 なるほどな。こいつは恨みっこがなくていいや。
嘉助 親分何をいうんだ
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