入れ札
菊池寛
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)小鬢《こびん》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)妻子|眷族《けんぞく》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、底本のページと行数)
(例)[#ここから一段下げる]
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人物
国定忠治
稲荷の九郎助
板割の浅太郎
島村の嘉助
松井田の喜蔵
玉村の弥助
並河の才助
河童の吉蔵
闇雲の牛松
釈迦の十蔵
その他三名
時所
上州より信州へかかる山中。天保初年の秋。
情景
[#ここから一段下げる]
秋の日の早暁、小松のはえた山腹。地には小笹がしげっている、日の出前、雲のない西の空に赤城山がほのかに見える。幕が開くと、才助と浅太郎とが出てくる。二人ともうす汚れた袷の裾をからげ、脚絆をはき、わらじをつけている。めいめい腰に一本の長脇差をさしている。浅太郎の方は、割れかかった鞘を縄で括っている。二人が舞台の中央にかかった時、後ろから呼ぶ声が聞える。
[#一段下げ、ここまで]
呼ぶ声 おうい、浅兄い、待てえっ。
浅太郎 おうい、何
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