(吉蔵、にぎりめしを入れた、大きいざるを持って出てくる)
吉蔵 親分、めしが来ましたぜ。
忠次 こいつはいいところへ来た。みんなめしを食いながら誰を入れるか思案をしてもらうのだ。
(吉蔵、めしをみんなに配る)
吉蔵 さあ、みんな二つずつだぞ。沢庵は、三切れずつだ。
みんな ありがてえ、ありがてえ。
喜蔵 久し振りに、あたたかいめしが食えらあ。
忠次 (にぎりめしを手にしながら)俺、水が飲みてえや。
吉蔵 水なら、半町ばかり向こうに流れがありますぜ。
忠次 そうか、じゃ行って飲んでこよう。
吉蔵 とってもねえ、いい水だよ。
三、四人 じゃ俺たちも行ってこよう。
浅太郎 俺も、顔を一つ洗いたいや。
(みんな、どやどやと流の方へ行く。後には九郎助と弥助だけがのこる)
九郎助 (にぎりめしを、まずそうに食ってしまった後)ああいやだ、いやだ。どう考えてもおらあ入れ札はいやだな!
弥助 なぜだい、兄い!
九郎助 入れ札じゃ、俺三人の中へはいれねえや。
弥助 そんなにお前、自分を見限るにも当らねえじゃねえか。忠次の一の子分といえばお前さんにきまっているじゃねえか。
九郎助 上辺
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