せえませ。
才助 浅兄い頼んだぜ。
浅太郎 安心していろよ。
十蔵 喜蔵兄い頼んだぜ。
喜蔵 合点だ。親分の身体は、俺たちの、目の黒いうちは、大丈夫だ。
(口々に、呼びかわしながら、三人山上の方へとかくれる)
牛松 浅たちがついてりゃ、ていした間違いはありゃしない。
才助 親分の胸の中だって、あの三人をめざしていたに違えねえや。
十蔵 違えねえや。あいつらをつけておけば大丈夫だ。
牛松 さあ、俺これから草津の方へ落ちてやらあ。
才助 おいらも、草津だ。
十蔵 おいらも草津へ出よう。
牛松 じゃ、草津組は一緒に出かけようや。九郎助兄い! お前は、どこへ行くんだ。
九郎助 おいら、もう半刻考えよう。
牛松 思案は、早い方が勝ちだぜ。
(入れ札の紙、風にふかれて飛び立たんとす)
九郎助 ああいけねえ。こんなものが残っていると、とんだ手がかりにならねえとも限らねえ。
(九郎助拾い集めて掌中に丸める)
牛松 じゃ、稲荷の兄い、ごきげんよう。
九郎助 もう行くのか、あばよ。
十蔵 弥助兄い、ごきげんよう。
弥助 ごきげんよう。
(弥助みんな口々に、別れの言葉を交わし
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