釈をしながら、頂上の方へぐんぐんと上りかけた。
「親分、御機嫌《ごきげん》よう。御機嫌よう」
 去って行く忠次の後から、乾児達は口々に呼びかけた。
 忠次は、振り向きながら、時々、被《かぶ》っている菅笠《すげがさ》を取って振った。その長身の身体は、山の中腹を掩《おお》うている小松林の中に、暫《しばら》くの間は見え隠れしていた。
 取り残された乾児達の顔には、それぞれ失望の影があった。
「浅達が付いていりゃ、大した間違はありゃしねい!」
 口々に同じようなことを云った。が、やっぱり、銘々自分が入れ札に洩《も》れた淋《さび》しさを持っていた。
 が、忠次達の姿が見えなくなると、四五人は諦《あきら》めたように、草津の方へ落ちて行った。
 九郎助は、忠次と別れるとき、目礼したままじっと考えていた。落選した失望よりも、自分の浅ましさが、ヒシヒシ骨身に徹《こた》えた。札が、二三人に蒐《あつ》まっているところを見ると、みんな親分の為を計って、浅や喜蔵に入れたのだ。親分の心を汲《く》んで、浅や喜蔵を選んだのだ。そう思うと、自分の名をかいた卑しさが、愈々《いよいよ》堪《た》えられなかった。
 朝の微風が
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