かく新子に満足してくれるらしかった。
「食事は、みんなと一しょに食堂で召し上って下さい。それから、夜は一切貴女のご勝手にして下さい。こっちの書庫にも割合本がありますから、読みたいものがありましたらご遠慮なく。」
二人はいつか、裏庭の芝生に出ていた。大きな柏の下に、山羊が、二匹つないであった。
家からは、人声が洩れ、かん高い幼い声も交った。
「お子さま達も、お眼ざめのようですわ。」
「そうですな、後で、貴女の授業ぶりを拝見したいですな。」
「お恥かしいけれども、どうぞ。」
準之助氏は、新子に庭内の樹や草花の名前を教えながら庭内を一廻りした。
――七時から初めての授業。小太郎は物解りのいい子であった。そして、先生が新しくって珍しいせいか、熱心に応《こた》えたりきいたりして、無事に授業がすんだ。
準之助氏は、遠くはなれたソファに腰をおろしながら、始終ニコニコしながら、満足そうに新子の教えぶりを見ていた。
五
二時から、小太郎に地理や歴史などの復習をしてやると、あとはかの女の時間であった。
主人や子供達と一しょに、お茶を頂くのも新子には楽しかった。
二、三日
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