を疑っていらしっても、いきなりここへ来て、直接行動を取るなんて、ひどいわねえ。」
「ひどい――とんでもないことをする。」前川は、憮然としている。
「前川さんも、いけないのよ。奥さん一人を、操縦できないくせに、私のお姉さんを、どうかしようって、ムリよ。」前川は、この小娘と思いながらも、返すべき言葉がなかった。
「それに、お姉さんを、心では二《に》っちも三《さ》っちもないほど、好きんなっていながら、いつまでも穏便主義でやろうなんて、ムリだわ。ムリというよりも、意気地がないわ。四十男の感傷主義なんていやだわ。女学生の作文のような恋愛なんか、いやだわ。そんな中途半端だから、お姉さんも苦しみ、貴君も苦しむのよ。やるのなら、ハッキリした方がいいわ。」
「ははははは。」
前川も、つい苦笑してしまった。しかし笑いながらも(負うた子に、浅瀬を教えられ)と、いういろはだとえ[#「いろはだとえ」に傍点]を思い出していた。
「じゃ、あたし行ってお姉さんを代りによこすわ。よく慰めてあげて頂戴ね。お姉さん、随分考え込んでいるわよ。」と、いうとスラリと立ち上って、早くも入口の方へ、二、三間歩み去っていた。
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