いと思うわ。」姉に対する美和子の信念は、熱を持っていて、さすがに有力な反撃であった。だが、夫人も負けてはいず、
「へえ――。不思議なことを聞くものね。それなら、なおのこと、こんなベッドのある部屋で、前川と会うことなんか、慎むべきですわ。」
「そんなことは、お姉さんに、おっしゃる前に、前川さんに、おっしゃるべきだわ。」
「貴女の指図は受けなくっても、むろん前川を責めますよ。しかしそうするためにも、このいかがわしい場所を、確かめておく必要があるじゃありませんか。」
 さすがの夫人も、才気|煥発《かんぱつ》、恐ろしい者知らずの美和子には、ややてこずっている気味である。
「だって、確かめようがありますわ。処女であるお姉様に対して、誰と怪しいとか怪しくないとかそんな確かめようなんて、ないと思うわ。そんなことを、おっしゃるのは、かえって貴方《あなた》の人格を傷つけることになるんだわ。」
 と美和子は、もう姉のために弁ずるよりも、いかにもけんだか[#「けんだか」に傍点]な増上慢を、歴々《ありあり》と顔に出している夫人に、突っかかって行く興奮に自ら酔うているように、止めどもなく、喰ってかかって行く。

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