神的陰翳がないから駄目と、あっさり云われても、姉の世話係として、劇団へ出入《でいり》するうちに、自分も舞台へ出る機会を掴むつもりでいた。
圭子達の今度の公演の場所は、帝国ホテルの演芸場であった。だが稽古場としては、銀座裏の桜亭という貸席を借りていた。
美和子は、その朗かな性質で、たちまち劇団の人達と、お友達になってしまい、姉の手伝いばかりでなく、誰の用事でもしてやるので(美和ちゃん美和ちゃん)と皆から重宝がられていた。
今度の出し物は、日本の現代作家の創作戯曲であった。
第一夜は、満員に近い盛況であった。
第二日目の夜、楽屋入をして間もなく、圭子は面会のお客があって楽屋から出て行ったまま、しばらく帰って来なかった。
二十分も経った頃、座員の一人が美和子のところへ来て、
「お姉さんから、ホテルのグリルにいるから、君にもすぐ来い! という言伝《ことづて》だぜ。」と、云った。
「ご飯喰べているのかしら。」と、美和子が訊き返すと、
「そうだろう。君にも、ご馳走してくれるんだぜ。」
「素敵! 素敵!」美和子は、雀躍《こおど》りして演芸場からは近い、ホテルのグリルへ駈けつけりた。
や
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