ジュを、下唇に移して、油性のクリームで光らせる。圭子も惹《ひ》きつけられて、鏡の中の美和子の顔を、まんじりともせず、眺めている。
やがて、アルコールで温めたこて[#「こて」に傍点]を取り上げて、額ぎわの髪の毛は、すだれのように、カールして、
「どう……クローデット・コルベールのクレオパトラみたいじゃない? 綺麗! 綺麗!」と、独りで悦に入り始めた。
「どうかと思うわ。せいぜい少女歌劇のクレオパトラくらいだわ。あんたのようなのを、ベビー・エロというのかしら。」
「ううん。この頃は、チビ・エロというんだって? でも綺麗なことは、お姉さんだって認めるでしょう。」
「あんたが、うぬぼれなければねえ。でも、あんたのようなお化粧は、お化粧の範囲《カテゴリイ》を通り越しているわ。化粧《ばけしょう》だわ。」
「だって、ネオン・サインの街を歩くのには、私のようなお化粧でなければ、刺戟がないって! この間、雑誌に出ていたわ。」
「ねえ、どこも、出かける当《あて》がないんなら、私の方へお手伝いに来ない? でも、私は新子ちゃんじゃないんだから、お給金なんか上げないわよ。」
「ええ、行って上げようか。私今日か
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