れたが、新子の胸の重い澱みは、どうすることも出来なかった。
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案内者
一
断髪が散らないように、手拭でキッと鉢巻をして、化粧をしている美和子の肌は、真珠色に輝いている。
「何だ! 朝湯に行って来たの。じゃ、美和ちゃん、一日だけの我慢で、今日はまた、新子ちゃんとこのお手伝いするつもり?」
「ううん。」
圭子に訊ねられて、美和子は眼に奇妙な色を浮べて、生意気な笑い方をして、首を振った。
「じゃ、どっか外《よそ》へ出かけるの?」
「ううん。」
「じゃ、どうしてそんなに、お洒落《しゃれ》するの。」
「別に、当《あて》はないの。でも、街を歩いていて、さる人に会った時、相手を少し口惜《くや》しがらせるお化粧するの。振られちゃった女の化粧ってのよ。これは……」
「何を云ってるのよ。」
圭子には、美和子の心理なぞ、少しも分らない。美和子は、真面目な表情で、鏡の中の己《おのれ》に、ジッと見入りながら、反り返っているまつ[#「まつ」に傍点]毛の一本一本に、メーヴェリンを塗っている。刷毛《はけ》でつけた頬紅を、脱脂綿でまたほのぼのとふきとり、上唇の濃いルー
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