感に委せる。多分、当る!」
「まあ!」
(前川さんにですか、それとも奥さんからですか)と、訊き返そうとしたが、それは相手が前川と自分の関係を知らない場合は、藪蛇になるので、新子は咽喉《のど》まで出た言葉を、噛み殺した。
「とにかく、貴女が酒場《バー》のマダムになったのは、大賛成だ。ロマンチックで、いいですな。僕は、軽井沢で、貴女と話をした味が、忘れられないんですよ。――カクテル、辛いのをね。一つ、貴女のとこのバーテンダーの腕前を拝見しましょう。」
木賀は、新子の心の一抹の不安を外《よそ》に、他意なく微笑んだ。
新子も、ひやっとした気持が、まだ胸には残っているものの、とにかく闊達《かったつ》な若者に対する自然な気安さで、立ち上ってバーテンダーのところへ行った。
六
銀盆に落花生とカクテルとを載せて、運んで行くと、
「貴女は?」と、問われて、
「いけないんですの。」と、云うと、
「そりゃ、つまんない!」と、云いながらも、酒ずきらしく、唇を細めて盃を嘗《な》めるように、
「こりゃ、相当なもんですな。こんないいバーテンを、どこでお見つけになったんですか。店の装飾と云い
前へ
次へ
全429ページ中380ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
菊池 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング