に上っている。その上、店が安定するまでの費用という名目で、開店当時、前川から三百円ばかり貰った。
新子も、草履を買ったり、好みの帯止めを買ったり、ドロンウォークの麻のハンカチーフを、半ダース買ったり、実用というのではない、形のピチリとした足袋《たび》を買ってみたり、そうした消費は、女性にとっては不思議な魅力を持った快楽である。
このような状態では、激しい恋慕もなく、媚《こ》びる気持もなしに、こうした生活を与えてくれた前川の愛撫を待つことになるであろう。現に昨夜は、恋愛に近い情熱で、前川の愛撫を待った自分ではないか。このまま進めば、結局自分のすべてを与えて、一茎の日かげの花、パトロンと愛人との関係に、青春の日を棄《す》てて行くのではあるまいか。
新子は音楽を聴いているうちに、だんだん気が沈んで来て、出ばな[#「ばな」に傍点]のお茶の味さえ消えていた。
二階から、この頃連夜の稽古で夜更しをしている姉が、だらしない寝衣《ねまき》姿で降りて来て、新子と向い合いに、
「あ――あ。」と、欠伸《あくび》しながら、ドサリと坐った。
二
「昨夜《ゆうべ》は、私より遅かったわね
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